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国際プログラム開催報告

ワークキャンプ2024inフィリピンスタッフ報告
Service Work Camp 2024 in the Philippines the report from the staff

2024年3月11日~19日に実施したワークキャンプのスタッフ報告をお読みください。

2024年3月11日~19日までフィリピンリサール州サンマテオでワークキャンプを実施し、日本から大学生を中心とした10名が参加しました。

コミュニティの状況を説明するManuel氏 コミュニティの状況を説明するManuel氏

ワークキャンプでは、2019年に行われたコロナ流行前の作業の継続が主な目的でした。2019年のワークキャンプでは、NGOであるBuklod Tao, Incが運営する敷地と隣接する土地に壁を建設する作業を行っており、2024年のワークキャンプではその増設作業を行いました。Buklod Taoは、サンマテオの住民やコミュニティに対して、災害リスク削減の取り組みを行っており、特に洪水被害の脆弱な地域への支援を中心に活動しています。

Buklod Taoは1996年にフィリピンでNPOとして正式に登録され、サンマテオの地に流れるマリキナ川流域に住む住民とコミュニティへの災害リスク削減の取り組みを中心とした活動を行っています。マリキナ川はフィリピン最大の湖であるラグナ湖および、マニラ湾に向けて流れるパシッグ川の支流です。Buklod Taoはサンマテオの中で特に洪水被害に脆弱なコミュニティへの支援活動を行っています。これまで台風や大雨によって川の水嵩が増し、幾度となく大洪水が発生し多くの住民が被害にあった過去から、日頃から地域住民の防災意識を高めること、地域における救命ボートの設置(救命ボートもコミュニティで作っています)、災害発生後の緊急支援活動、被災者への心のケア、住民や地域の子どもたちへの環境教育などコミュニティがより防災への取組みを強化できるよう活動をしています。支援活動地域には経済的な苦難にある住民たちが多くいるため、防災の取り組みとしても経済的な安定が不可欠であることから、住民に対し小規模ビジネス支援(ジュースパックを再利用した製品を作りなど)も行っています。

ワークキャンプの初日は、Buklod Taoでのオリエンテーションのあと、実際の支援活動を行うコミュニティを訪問し、マリキナ川沿いに住む人々の生活を学びました。このコミュニティは経済的に困難を抱える住民が多く住む地域ですが、1月に大規模な火災が起こり、再建を進めています。Buklod Taoが普段からコミュニティの住民たちと信頼関係を築いているからこそ、部外者である私たちの訪問を受け入れてくださいました。地域の子どもたちが私たちの訪問のために歌を歌ってくれたことは参加者たちに強い印象を残しました。

2日目から本格的な奉仕活動(ワーク)が始まりましたが、壁の建設を始める前にBuklod Taoが行うCompost作り(堆肥作り)を体験しました。持っている資源の中から無駄にすることなく全てを使い、堆肥作りを行う方法を学びました。人間の尿も肥料作りの一つのアイテムとして使うことも教えられ、日常生活の中でゴミや害虫だと思われてしまうものも、Buklod Taoでは重要な一つとして、活用し循環させていました。

ワークキャンプのメインである奉仕活動(肉体労働に従事し壁を建設する)の壁の建設作業では、コミュニティの大工の指導を受けながら、根切り作業(ショベル等で土を掘り起こす工程)、配筋を組む工程、セメントづくり、ブロックの積み上げを行いました。壁の建設には大量のセメントとブロックを使用しますが、セメントづくりのために砂利を一輪車で何度も往復し運び、砂利、セメントの粉、水と混ぜ合わせ、そのセメントを土台部分に流し固めるまで待ち、ブロックを積み上げていきます。根切り作業を始め思うように作業が進まないことや、大工の方々と比べ当然自分たちの作業効率の悪さなどの違い、慣れない肉体労働に参加者の疲労も見られましたが、チームメンバー内で作業を交代するなどし、4日間、大きな怪我や事故、病気になるものもなく終えることができました。大工の方々が参加者の休憩時間に作業を進めてくださったことも加え、予定していた4対の壁の建設を終えることができました。

労働をする中から日々の改善や効率への気づき、共に汗を流すことの充実感、他者に仕えること、他者と協力し信頼関係を構築することの大切さを学んでいました。日本からきた私たちを心よく受け入れてくださった、Buklod Taoのスタッフの方々と過ごす時間の中から、スタッフ一人一人の真摯な姿と、地域に根差しながら防災意識を高める「地域」作り、「人」を作り上げる支援活動、またこのワークキャンプのために長期間にわたりBuklod Taoが受入れのために準備をしてくださってたことを参加者一人一人が学びました。

Buklod Taoは、キリスト教の理念を打ち出しているNPOではありませんが、団体創立者であるManuel氏は、キリスト者として自分の受けている恵みをお返しする愛の行動を実践し続けている方でした。

Buklod Taoでの最終日にManuel氏と参加者とが行った振り返りの時間では、参加者一人一人の質問に真摯に応えてくださる姿勢、自分たち(参加者)がいかに多くを与えられているのか、恵まれているのかといったことを気づかせてくれる時間でもありました。真剣に向き合ってくださる大人がいること、地域のために心を砕いていらっしゃることを語ってくださったことは、一人一人の心に強く響いているようでした。

ICANの事務局長から説明を聞く参加者 ICANの事務局長から説明を聞く参加者

Buklod Taoでの活動を終えた次の日は、日本のNGOで2023年度開発・育成活動助成金の助成団体である特定非営利活動法人ICAN(アイキャン)の活動を知る機会を設けました。フィリピンと日本国内で活動するICANはフィリピンのストリートチルドレンへの支援を行っています。今回の訪問では、ICANがSan Mateoで運営する児童養護施設「子どもの家」を訪問しました。「子どもの家」では、事務局長からICANの活動を伺い、元路上の子どもであった青年から直接話を聞く機会を持ちました。ICANでは、元路上の青少年たちのためにKALYE(カリエ)という協働組合を設立しています。職業訓練等を実施し、これまでカフェを運営支援や、青少年たちが考え、パンや有機バナナチップスなどを製造しオンライン等で販売しています。フィリピンに到着したその日から、マニラで多くの路上の子どもたちを目にした参加者たちにとって、ICANの活動を知ることができたことは多くの疑問を解決する一つの学びでもありました。

ワークキャンプ中は、毎日祈りから始まり祈りで終わる日々を過ごし、夜には必ず参加者同士の振り返りの時間を持ちました。この振り返りの時間を通して、お互いの違いを知り、自ら壁を壊して心を割って話しをする中から信頼関係を構築し、成長をしている様子がうかがえました。十人十色でそれぞれが違う考えを持っている中で、日々正直に感じたことや考えたことを話し合う振返りの時間はお互いに多くのことを学んでいるようでした。

8日間という限られた日程でしたが、参加者たちはワークキャンプを通じて、他人との関わりの中で自己を発見し、また自国について、フィリピンについて、アジアについて考える機会を持ち、国際社会や社会課題に目を開き、新しい出会いを与えられ、国際感覚を高め確実に成長して日本に帰国しました。

ワークキャンプを受け入れてくださったBuklod Taoをはじめ、ICANや日曜日に訪問したSan Mateoメソジスト教会の方々のご協力と温かい心遣いに心よりお礼申し上げます。

弊財団ではこれからも次世代の育成のために体験を通した研修プログラムを実施して参ります。

【参加者の声】
「自分自身が大きな格差の社会構造の中にいる人であることに嘆くのではなく、微力であってもその構造の中の小さなコミュニティから小さな変革を起こしていける者として、これからは、複雑で解決の糸口が見えない大きな社会の中で声なき声を持つ小さき人々のことを目に留められる人として生きたいと強く思う」(大学生、女性)

「今回のワークキャンプを通じて多くの学びがあった中で心にとめておきたいと考える事は、謙虚さと優しさを心にとめてこれから出会う仲間と共に何らかの目標に向かいたいということです。すべてのプログラムを通して多くの出会いと優しさに触れることが出来ました。私もここで受けてきた優しさを何らかの形でお返し出来たら幸せであると感じています。優しさを受けた分だけ優しをほかの人と分ち合うことの出来るような人になりたいと思うようになりました。」(大学生、男性)

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