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国際プログラム開催報告

ワークキャンプinフィリピン2019スタッフ報告
Service Work Camp in the Philippines 2019 the report from the staff

2020年は実施することができなかった、フィリピンでのワークキャンプですが、
2019年3月5日~11日に実施したワークキャンプのスタッフ報告をお読みください。

2019年3月5日~11日までフィリピンリサール州サンマテオでワークキャンプを実施し、日本から大学生を中心とした11名(インターン1名)が参加しました。

ワークキャンプでは、リサール州サンマテオで活動するNGO Buklod Tao, Incの敷地と隣接する土地の境を区切るための壁を建設する作業の一部を担いました。Buklod Taoの活動拠点がある場所は住宅街を抜けた、静かな場所に位置しています。街中に比べて自然に囲まれ、体感温度も涼しく感じられる過ごしやすい場所ですが、夜間は街灯もなく盗難の被害が発生していることから防犯対策として壁の建設を依頼されました。
Buklod Tao,Incは1996年にフィリピンでNPOとして正式に登録され、サンマテオの地に流れるマリキナ川流域に住む住民とコミュニティへの災害リスク削減の取り組みを中心とした活動を行っています。マリキナ川はフィリピン最大の湖であるラグナ湖および、マニラ湾に向けて流れるパシッグ川の支流です。Buklod Taoはサンマテオの中で特に洪水被害に脆弱なコミュニティへの支援活動を行っています。これまで台風や大雨によって川の水嵩が増し、幾度となく大洪水が発生し多くの住民が被害にあった過去から、日頃から地域住民の防災意識を高めること、地域における救命ボートの設置、災害発生後の緊急支援活動、被災者への心のケア、住民や地域の子どもたちへの環境教育などコミュニティがより防災への取組みを強化できるよう活動をしています。支援活動地域には経済的な苦難にある住民たちが多くいるため、防災の取り組みとしても経済的な安定が不可欠であることから、住民に対し小規模ビジネス支援や地域の女性たちがジュースパックを再利用した製品を作り販売する支援も行っています。Buklod Taoの驚くべき点は、物がない中からいかに知恵を使い、工夫し、お金をかけず、さらに環境に配慮しながら、新しいものを生み出すかということを徹底して行っている点でした。

ワークキャンプの目的の一つであるである奉仕活動(肉体労働に従事し壁を建設する)である壁の建設作業の初日は、大工の指導を受けながら、根切り作業(ショベル等で土を掘り起こす工程)と配筋を組む工程とセメントづくりでした。壁の建設には大量のセメントとブロックを使用しますが、セメントづくりのために砂利を一輪車で何度も往復し運び、セメントの粉と水と混ぜ合わせ、そのセメントを土台部分に流し固めるまで待ち、ブロックを積み上げていきました。根切り作業も地面が固く思うように作業が進まず、慣れない肉体労働に参加者の疲労も見られましたが、チームメンバー内で作業を交代するなどし、3日間、大きな怪我や事故、病気になるものもなく終えることができました。短期間で建設できた壁は1対のみですが、労働をする中から他者に仕えること、他者と協力し信頼関係を構築することの大切さを学んでいました。日本からきた私たちを心よく受け入れてくださった、Buklod Taoのスタッフの方々と過ごす時間の中から、スタッフの一人一人の真摯な姿と、地域に根差しながら防災意識を高める「地域」、「人」を作り上げる支援活動を学びました。

Buklod Taoは、キリスト教の理念を打ち出しているNPOではありませんが、団体創立者であり代表者のManuel氏は、キリスト者として自分の受けている恵みをお返しする愛の行動を実践し続けている方でした。特に印象に残ったのは、Buklod Taoでの最終日にManuel氏と参加者とが行った振り返りの時間です。参加者一人一人の質問に真摯に応えてくださる姿勢、今でも迷うときもありながら、その時にベストと思われる活動を行っていることを語ってくださり、地域のために心を砕いていらっしゃることがわかる時間でした。

Buklod Taoでの活動を終えた次の日は、日本で人身取引の被害にあった女性たちやその家族、子どもたちへ支援を行うバティス女性センターを訪問し、団体の活動と女性たちと交流する時間をもちました。実際に人身取引の被害にあった女性たちから直接話を伺ったあと、一緒に手作りアクセサリーを作成する時間を持ちました。女性たちが勇気をもって語ってくださった話から、改めて日本とフィリピンの関係を知り、社会が直面する貧困問題や、女性への暴力への気づきを与えられ、参加者一人一人が社会課題に関して当事者意識を芽生えさせる契機となっていました。参加者の一人の男子学生は「肉体的に比較して、男性の方が女性よりも力が強い事実があるからこそ、男性こそが女性への暴力の実態があることを知ることが大切だと気が付きました。」とその日の夜の振り返りで語っていました。

ワークキャンプ中は毎日祈りから始まり祈りで終わる日々を過ごし、夜には必ず参加者同士の振り返りの時間を持ちました。この振り返りの時間を通して、お互いの違いを知り、自ら壁を壊して心を割って話しをする中から信頼関係を構築し、成長をしている様子がうかがえました。毎日の肉体労働の中でも学びや気づきがあり、お互いに励まし、他の仲間の良いところから刺激を受け自分も挑戦してみようと思える関係性をワークキャンプの日程を通じて形成していました。1週間という限られた日程でしたが、参加者たちはワークキャンプを通じて国際社会や社会課題に目を開き、新しい出会いの中で違いを知ると共に、国際感覚を高め成長して日本に帰国しました。

【参加者の声】
「自分自身の生活を見直してみると、本来の用途としては使えなくても、工夫すれば別の使い方があった可能性があるものを捨ててしまったり、必要なものがあったら買うという考え方しかなかったりと、気づかないうちに無駄な生活を送っていることがわかりました。”より良い生活”というのは、常に質の良いものや、見た目の良いものなどから構築されている生活のことをいうのではなく、あるものを無駄にしない生活のことをいうのだと思いました。」(大学生19歳、女性)

「私がこのキャンプに参加したのは、何かに用いられるためだと思っています。今回得られた経験を、自分の勉強やこれからの人生に活かすことはもちろん、自分には何ができるのか、どうしたらこの恵の時を生かせるのか、しっかり考えていきたいです。そして今回の経験を心に留め、自分も人のために何か行動を起こせる人になれるよう、努力し、生活していきたいと思います。」(大学生20歳、女性)

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