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2022年度開発・育成活動助成金交付事業のご紹介(AMDA社会開発機構)

ウェスレー財団では、助成金事業の一つとして、「開発・育成活動助成金」を実施しています。この助成金では、日本、アジア・太平洋地域で2年以上すでに実施されている継続的な事業に対し、助成金を交付しています。この助成金の交付団体の一つである、特定非営利活動法人AMDA社会開発機構(略称:AMDA-MINDS)の活動をご紹介します。

AMDA社会開発機構(以下AMDA-MINDS)は、「今日の家族の生活と明日の希望の実現」を目指し、アジア・アフリカ・中南米の貧困地域において、保健医療を中心とした社会開発の活動に取り組んでいます。

当財団の2021年度開発・育成助成金では、AMDA-MINDSが実施する「ミャンマーの乾燥地帯における水衛生環境改善プロジェクト」に助成金を交付しました。

ミャンマーの乾燥地帯における水衛生環境改善プロジェクトの紹介記事はこちら

活動地の課題

アジア最貧国の1つであるネパールは、経済成長をけん引する産業が育っておらず、一人あたりの年間所得は1,190ドルにとどまっています。海外出稼ぎ労働者からの送金や観光業に依存する社会経済は、コロナ禍が大きな障害となり、その影響としわ寄せは社会的に弱い立場にある人(貧困層、子ども、女性、少数民族や低カースト層ら)へ及んでいます。経済面はもちろん、健康の面でも誰一人取り残さない、きめ細やかな支援が必要とされています。

2022年度の申請事業の活動地は、ネパール政府から低開発地域として支援優先郡に指定されているゴルカ郡の南東部丘陵地(標高900~1,600m)に位置する2つの地区です。マガル族など6つの民族・カーストが住み、98%が急斜面を利用した雑穀畑での農業を主たる生計手段として営んでいますが、年間を通じて十分な食料を確保でき、且つ余剰農作物を販売しているのは全世帯の9%に留まっており、55%の世帯において家族の誰か(主に家長の男性か女性)が現金収入を得るために国内外に出稼ぎに出ざるを得ない状況です。地域内で安定した収入・就労の機会を得ることは難しく、大多数の世帯は貧困から抜け出すことが困難です。

この活動地では1990年代初頭、コーヒー栽培好適地に位置する利点に着目した郡農業局が、零細農家の収入向上の一環としてコーヒー栽培を導入しましたが、当時はコーヒー市場が十分に育っていなかったこともあり、栽培しても売れず、零細農家の収入向上には至りませんでした。そのため、中にはコーヒーの木を切り栽培をやめた農家もいましたが、約290世帯は現在に至るまで細々とコーヒー栽培を続けています。

その後、2016年にネパールのコーヒーがフランスで最優秀賞を受賞したことを機にその価値と国内外での需要は高まっており、収穫されたコーヒーを買い付ける仲介業者の数も増えています。しかし、コーヒー栽培農家の年間収入は約1,500円にとどまっており、経済的自立を支える主要産品としての地位を占めるには程遠い状況です。

コーヒー栽培農家の収入向上には、収穫したコーヒーチェリー(コーヒーの実)はドライチェリー(天日などで乾燥しただけのコーヒー果実)ではなく、適切な方法で精選したパーチメント(果肉除去・発酵・水洗・乾燥を施した内果皮付きのコーヒー豆)で出荷することで換金性を高める必要があります。しかし、技術習得の機会と必要資機材が欠如していることにより、卸価格が安いドライチェリーのまま出荷せざるを得ないのがこれまでの現状でした。正しい精選プロセスに関する技術と必要な資機材さえそろえば、ドライチェリーの約6倍の卸価格であるパーチメントでの出荷が可能になるため、零細農家の収入向上が期待できます。

開発・育成活動助成金交付事業の内容

2022年度開発・育成活動助成金交付事業では、活動地である2つの地区でコーヒー栽培に取り組んでいる290世帯を対象に、栽培の能力強化と基盤整備の側面から支援を行います。具体的には、コーヒーチェリーの正しい精選プロセスに関する技術研修、精選に必要な資機材の供与、グループの自立的な運営・管理に関する研修、苗木管理に関する巡回指導などを実施します。

今年度の活動の進捗や実施後の報告については、今後も記事を掲載いたしますので是非ご覧ください。

●AMDA社会開発機構(AMDA-MINDS)のHPはこちら

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