国内プログラム
岩手三陸スタディキャンプ2024実施報告
2024年11月1日から11月4日まで岩手県陸前高田市、大船渡市、釜石市を訪れ「岩手三陸スタディキャンプを実施しました。大学生と社会人の計5名の参加者で、現地の方々の体験談や復興の歩み、防災・減災について学びを深める機会となりました。
1日目
- 陸前高田市内の震災遺構を徒歩で見学(旧気仙中学校跡、防潮堤、奇跡の一本松)
- 津波伝承館で震災被害や復興の歴史について学ぶ
- 「Camocy」で地元の食材を使った夕食
震災遺構をガイドの方が案内していただきながら、
震災当日に生徒たちがどのように津波から逃げたのか、津波がどこまで来たのか、
震災後、山を削りベルトコンベアで土砂を運び町の嵩上げを行った事、
新しく出来た防潮堤は津波を完全に防ぐものではないことを知りました。
陸前高田市内で古くから醸造業が盛んであった地区があります。その地区も津波で町のほとんどが流されました。震災前の発酵風景を取り戻すことを目的とした作られた施設である「Camocy」で夕食を食べ、地元の豊かな食材を食べる機会を得ました。
2日目
陸前高田市で活動する一般社団法人トナリノが主催する防災伝承プログラムを1日を通して、震災前、震災中、震災後、防災について体験学習や語り部の方のお話を通して学ぶ機会となりました。
- たまご村(旧仮説商店街)を訪問、村長の講話
- グローバルキャンパス(旧高田中学校跡)内で語り部の体験談や避難生活や防災の重要性を学ぶ
- 仮説住宅体験館の見学
- 炊き出し体験(蒔きでの炊飯)
一般社団法人トナリノの事務所も併設されているたまご村(旧仮説住宅商店街)を訪問し、たまご村の村長から震災後からお店を再建するまでの具体的な苦労を含め、すべてが初めてであり、前例がない中での取り組みであることのお話を伺いました。また現在、地域の男性の集いの場である「健康麻雀」の取組みもご紹介いただき、人口の少ない地方では飲食店以外に男性の集まる場所が少ないという現状を聞きました。
陸前高田市内のグローバルキャンパス(旧高田中学校跡)内で、震災前の町の様子と津波によって浸水した地域の模型を見ながら、語り部の方から当時どのように家族それぞれが逃げたのかという具体的な体験を伺いました。
「いのちのイメトレ」というプログラムでは、災害発生時の具体的な行動を自分の直近の生活を基に考察し、改善できる部分や取り組むことを明確にするプログラムを体験しました。
また、避難所での厳しい生活をイメージする体験学習や、避難所に行かない避難方法や普段の備えの大切さについて学び考える機会を持ちました。
語り部の方から避難所から仮設住宅への移行する中での苦労や出来事を語っていただき、仮説住宅における生活の厳しさや住民同士の協力体制、外部の支援団体との関わりについても考える機会となりました。
炊き出し体験では、地域の女性会代表の方に炊き出しの具体的な活動や方法を学び、蒔きでご飯を炊く体験を通して、震災直後は電気もガスもない、準備なくキャンプ生活となることや、その時に自分ができることを行う奉仕の精神を学びました。
3日目
- 大船渡市の商店街で体験できるQRコードを読み取る「あの日」体験プログラム
- 日本基督教団大船渡教会の主日礼拝
- 猪川地区公民館文化祭訪問
- NPO法人おはなしころりんの活動
- 船戸義和氏の講話(コミュニティ作り)
- 三陸アクティブにて郷土料理作り
大船渡市の商店街に設置されたQRコードを読み取りながら、加茂神社まで避難を体験するプログラム「あの日」体験プログラムを通じて、震災当日の状況で自分はどの選択をするのかを考える機会を得ました。大船渡教会では、主任牧師の村谷先生から2011年4月から大船渡教会では多くのボランティアを受け入れてきたこと、支援物資を配給する場所となったことなどを昼食を交えながら伺いました。受入れ場所としての苦労についても伺いました。
船戸氏の繋がりから、猪川地区公民館で行われていた地区の文化祭を訪れ地域の方々の温かいおもてなしを受けました。大船渡市で活動するNPO法人おはなしころりんの理事長江刺氏から震災前、震災後、現在に至る活動を直接伺い、大人向けの紙芝居の読み聞かせを体験しました。地域への愛とつながりを感じるとても温かいひと時を過ごすことが出来ました。
その後、現地のコーディネートをお願いした岩手大学客員准教授船戸義和氏からは、震災後から現在に至るまでのコミュニティ作りやその課題について講義や、陸前高田市、大船渡市、陸前高田市の各地域の復興の違いについても解説をしていただきました。2011年からこれまで岩手県沿岸を中心とした地域支援に関わっている船戸氏からは、地域コミュニティとは何なのか?人の復興は自分たちが計画しているよりもはるかに時間がかかること、日本の課題である高齢化等の課題先進地であることなどを伺いました。
大船渡市三陸町越喜来にある旧小学校を利用した宿泊施設、「三陸アクティブ」では、郷土料理作りを地域の2名の女性から教えていただきました。大船渡産の海産物を使ったお料理を沢山教えていただき、豊かな海産物と新鮮な野菜を使った料理をお腹いっぱいいただきました。
最終日
- 三陸鉄道:震災学習プログラム(盛駅→釜石駅)
- 釜石市:鵜住居「いのちをつなぐ未来館」避難経路追体験プログラム
- 釜石市内見学
最終日は三陸鉄道の学習プログラムを体験しました。車両を一両貸し切りで震災当日の様子について三陸鉄道の方の話を伺いました。三陸鉄道は、大船渡市盛駅から岩手県北東部久慈市の久慈駅まで三陸海岸を通る鉄道です。
2011年3月11日の地震と津波で大きな被害を受け、2019年の台風被害でも大きな被害を受け、ようやく全線開通となりました。穏やかで青々とした海の景色を眺めながら、3月11日に三陸鉄道の社員の方の視点を通した経験談と対応を伺いました。三陸鉄道は沢山のトンネルがありますが、3月11日の日にこのトンネル内に留まるよう指示があり、津波の被害を逃れることができた話を聞きました。とっさの判断が命を救うことになることを改めて教えていただきました。約1時間の三陸鉄道に揺られ、目的地の釜石駅で下車しました。
釜石では、鵜住居町にある公共施設「うのすまい・トモス」の内の学習施設「いのちをつなぐ未来館」(震災伝承と防災学習のための施設)が実施する現地体験プログラム:避難路追体験を震災を体験した語り部(当時中学生だった)の方のお話を聞きながら、実際の避難路を歩く経験をしました。当時中学生だった語り部の方から、当日の様子や普段の避難訓練の大切さと先生方が普段から避難訓練を実施し、訓練を工夫されていたかを知ることができました。
その後、釜石市内の町の様子を船戸氏の説明を聞きながら歩いて見て回りました。釜石市は陸前高田市や大船渡市と違い、嵩上げをせずに復興を進めました。鉄筋コンクリートの建物が多く残されていたこともあり、嵩上げをしない決断をし、復興を進めたようです。同じ三陸地方の町でも、復興や町作りの違いがあることを知りました。
釜石市からバスで盛岡駅まで向かいそこで3泊4日のプログラムは終了となりました。
今回のスタディキャンプでは現地私たちを温かく迎い入れてくださった方々、体験談を語ってくださった語り部の方々、学びの機会を提供してくださった団体や各個人の方たち、現地のコーディネートとしてご協力くださった船戸氏に感謝申しあげます。
参加者の声
このプログラムの体験を通して私が学んだことは、「備えが人の命を守る」という事実です。日常的な防災教育と地域のつながり、そしてそれを家庭に伝えるという連携が、震災時に多くの命を救いました。災害はいつ起こるか分かりませんが、備えや予測能力、そして迅速な判断が、自分と周囲の命を守る鍵になります。私たちが学ぶべきことは、災害へを単なる「知識」として終わらせるのではなく、それを「行動」に変えるための意識の改革だと考えました。
(19歳大学生)
今回の岩手での経験を通して、震災発生時から現在まで、復興のために尽力されている現地の方々の強い思いや献身的な姿に感化され、私も他者のために進んで寄り添える人でありたいと改めて強く思わされました。また、防災や地域づくりに関して、自分ごととして捉えて終わるのではなく、さらに進んだ一歩として、地域コミュニティの一員という意識を持ち、自分たちごととして周りに働きかけることのできる存在になりたいと考えるようになりました。
(22歳大学生)