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2022年度開発・育成活動助成金交付事業のご紹介 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン(世界の医療団 日本)

ウェスレー財団では、助成金事業の一つとして、「開発・育成活動助成金」を実施しています。この助成金では、日本、アジア・太平洋地域で2年以上すでに実施されている継続的な事業に対し、助成金を交付しています。この助成金の交付団体の一つである、特定非営利活動法人メドゥサン・デュ・モンド ジャポン(世界の医療団 日本)(以下「世界の医療団 日本」と記載)の活動をご紹介します。

フランスに拠点を持つメドゥサン・デュ・モンド(MdM)は、1980年にパリで設立された国際NGOで、難民・国内避難民への医療支援、紛争地や医療体制が脆弱な地域での医療システムの復旧や構築を支援し、国籍、人種、民族、思想、宗教などにかかわらず、誰もが基礎的医療にアクセスできるよう活動しています。また、「健康は誰もが等しく持つ権利」と考え、医療にアクセスできない状態の人々がいる現状を改善すべく、多くの人に当事者の声を伝える証言活動と、政策決定の過程に働きかける提言も行っています。

1995年の阪神淡路大震災の際に、フランスから緊急医療支援チームが派遣されたことを機に日本に設立された世界の医療団 日本も、同様の人道医療支援活動を国内外で実施しています。主な活動内容は、バングラデシュでのロヒンギャ難民支援、東京都内でのホームレス状態の人々の保健・医療支援などです。

活動地の課題

活動地の保健システムを支える関係者たち©MdM Japan

世界の医療団 日本は、2017年よりラオスで母子保健改善事業を行っています。ベトナムとタイに挟まれた東南アジアの内陸国ラオスは、下痢や肺炎など治療可能な病で命を落とす子どもたちが多く、5歳未満児の死亡率は出生1000人あたりおよそ47人(日本のおよそ20倍)となっています。医療機関を受診する前に村落レベルで命を落とすケースや、手遅れになってから医療機関に運び込まれるケースが多いそうです。また、貧困や十分な教育を受けていないことにより、10代の妊娠が多く、3分の2の出産が医療従事者の立ち会いのない自宅等で行われているため、妊産婦死亡率は10万人あたり185人であり、日本と比べると37倍にも及びます。

これらの課題の背景には、ラオスの医療体制の脆弱さ(医療施設の数自体が少なく、基礎的な医療資機材すら整っていない医療施設が多いこと、医療従事者の人数とスキルが不足していること等)や、当事者である住民の健康意識の低さ、医療を受けることへの物理的、心理的、および社会的なハードルがあります。そして、ラオスの保健計画を立案実行している保健省に十分な予算がないこと(GDPに占める国の保健支出はわずか2%)や、適切な立案実行のスキルが不足しているという点も、5歳未満児死亡率と妊産婦死亡率の高さの要因になっています。

今回の助成金交付事業の活動地の一つであるラオス北東部フアパン県内のサムヌア郡は山岳地帯にあり、女性と子どものワクチン接種率が低く、医療従事者の立ち会いのない出産が依然として多い地域です。もう一つの活動地である同県内のクアン郡には、複数の少数民族が住んでおり、貧困率が40%に達しています。

開発・育成活動助成金交付事業の内容

世界の医療団 日本はこれまで、フアパン県内の10の郡のうち、ソン郡とフアムアン郡という2つの郡で小児医療疾病統合管理研修の実施を通じた医療従事者の育成や研修の講師を養成することにより、医療従事者の層を厚くすることに尽力してきました。また、村落での健康啓発ボランティアの育成を通じ、村民自らの健康への意識向上を図ったり、県保健局、郡保健局と協働することで、現地の保健計画の立案、運営にも参画し、医療体制の向上を促してきました。

2022年度開発・育成活動助成金交付事業では、前身事業を受け継ぎつつ内容を発展させる形で持続可能な医療体制を整えるため、保健医療提供者(病院・行政)の体制・サービス強化と村落でのプライマリーヘルスケア強化を行います。今年度の活動の進捗や実施後の報告については、今後も記事を掲載いたしますので是非ご覧ください。

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